真っ赤と真っ黄色

日曜日、朝一番の北陸新幹線に乗って上越妙高経由で高田に。豪雪で知られる日本のスキー発祥の町は厳しい冬を迎える前のひととき、おだやかな日差しに包まれていた。城址公園の一角にある高校に到着。新潟県内の高校の軽音楽部を活性化してネットワークを作ろうというプロジェクトのために月に一度、こうして新潟のあちこちの高校を訪れて指導したりカウンセリングしたりという仕事のはずが、17歳青春、ギターを抱えて叫ぶ高校生たちの汚れていないまっすぐな気持ちに実は教えられることの方が多い。

さてこの日もいろいろなレッスンが行われたが、現場の若い講師が持参してきたボーカル志望への歌唱指導の課題曲がMy Hair is Badの「真赤」だった。正直、ここ10年ほどティーンズたちが熱狂するアーティストや楽曲に関してはまったくわからなくなってきている。椎名林檎とか神聖かまってちゃん、ぐらいまではなんとかついて行けたが、ここのところ「音楽吸収スポンジ脳」はワインとビールでびしょびしょになっていてもう何も吸収しない。あいかわらずiPhoneのライブラリーには、マリーナ・ショウクルセイダーズとかジョビンとかダイアナ・クラールとか20年以上前のAORばっかり。

「♪ブラジャーのホックはずす~」から始まるその「真赤」の詞の見事さに自称・作詞家の私はびっくりこいた。自分にはもう書けない、とっくに失ってしまった、蒼くギザギザで近づいただけで切りつけられるような息をのむ感性だ。「もうおまえとおまえの時代はとっくに死んでいる」と、この歌はとうとう私に死亡宣告をした。

My Hair is Bad|真赤

そんな潔いため息をつきながら校舎の窓から中庭に目を移すと。今度は「黄色」。それは鮮やかに色づく見事な真っ黄色のいちょうの大木だった。10月から忙しかったせいもあり、今年はじめて感じる深まる秋の色だ。

そういえば、もうひとつの黄色を家に無造作に置いてきてしまったことに気づいた。土曜日、所用でお伺いした、ある、とても素敵な庭のあるお宅、その庭はいつ行っても四季の野趣あふれる草花が無造作に花をつけている。私はこのお宅の、実は手を入れていながらも、草花を自然のままに遊ばせる庭に哲学的な感動さえ覚える。

帰り際にご主人が、「そうだ、花柚子がたくさんなったのでひとつ持ち帰

 りませんか?」と剪定ばさみを片手に庭に出た。

いただいた小さな柚子の実は青からぼんやりと黄色に色づきはじめている。

今夜は冷えこんでくるらしい。この黄色を主役に湯豆腐にでもしようか。

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