手の込んだイタリアンやスパニッシュ。たとえば、肉とトマトをフレッシュハーブとじっくり煮込んでラグーをつくる、とか。魚介類を何種類も買い集めペスカトーレやズッパをつくるとか。フレッシュラムを岩塩に包んでオーブンで焼くとか。休みの日は朝から白ワインをキッチンで飲みながら一日かけてそんな料理もいいけれど、それとは別に、忙しかった日の夜は質素だけど至福を感じる「ひとりバール」タイムがあってもいい。
たとえば、「イトキト」のバケットを手に入れた日。用事があって立ち寄った大岡山の駅前商店街。訪れるだけで心が彩られ、パリの街角のパン屋さんに迷いこんだような錯覚にブーランジェリー。間口2mほどの小さいお店はいつも幸せそうな顔をした人たちでにぎわっている。
バケットと言えば個人的な好みもあるが、本家本元のおいしさを誇るパリの名店ポウル。代官山シェ・ルイ、学芸大学のはずれにあったがなぜか突然神奈川の二宮に移転してしまったティグレ。最近では横浜磯子区のイル・デ・パンなどなど私の好きな店は各地にある。もちろんイトキトもそのひとつ。
さて、そのイトキトの48時間パン種を熟成させたバケットを片手に帰宅。そうだ、イタリアのプロシュートがあったっけ。冷蔵庫には切らしたことがないフレッシュトマトとルッコラ。そして、そうそう今年はギリシアの極上のエクストラヴァージンオリーブオイル、神の雫「モリア・エレア」があるではないか!もしかしたら、この最高級のオリーブオイルはこんな使い方が一番似合うのかもしれない。
テーブルに無造作にならべたお気に入りの食材たち。そしてワイン。
なんか、しあわせ。なんか、ぜいたく。
ひとりでふらりと名もない異国の街のバールのカウンターにいるように、心がふわりとすこし軽くなる。
今年はどんな年だったろう?
来年はどんな年になるのだろう。
テレビを消してジョビンの「Look like December」でも聴きながら2018年を見送ろうか。