イタリアの片田舎の広場

家から自転車でほんの5分のところに小さな入り江がある。横浜港から入り込んでいる川がそのまま舟入場として公園のようになっている。このあたりはハゼ釣りの名所と呼ばれているらしいが、実は釣りをしている人をあまり見かけたことがない。
私はこの場所が好きで、勝手に「イタリアの片田舎の広場」呼んでいる。理由を考えても特に理由らしい理由はなく、西側の小高い丘に沈む夕日がきれいなのと、人があまりいなくて老人たちがのんびりと犬を連れて夕方の散歩を楽しんでいる。
私は思い立つとよくここに釣りに来る。
餌の青イソメはコンビニ売っている。
何よりも私以外は釣り人はいなくて、行きかう人たちも何が釣れているかなど気にも留めないところが好きだ。白ワインをステンレスの水筒にいれたり、缶ビールをもってきたりして、夕暮れのほんの短い時間、竿をキャストする。
去年は息子がまだ就活していて家にいたので、やる気満々で重装備でやってきた。スズキの稚魚のサッパがたくさん釣れてびっくりした。猫もびっくりした。
そう、ここはあまり魚が釣れてはいけない私のお気に入りの場所、誰にも教えたくない「イタリアの片田舎の広場」なのだ。

 

竿を水面に投げて、柵に置いて、ベンチに座って一杯飲む。
魚がかかろうとかかるまいとそんなことは実はどうでもいい。
夕日と潮風が頬を撫でていく。
いつも大切なことを考えるときはなぜかここにやってくる、私の大切な場所のひとつなのだ。

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